Ag線源を用いた 全固体リチウムイオン電池の透過X線回折測定

    Application Note B-XRD1124

    はじめに

    固体電解質を使用した全固体リチウムイオン電池(全固体電池)は、既存の液体電解質を使用したリチウムイオン電池と比較して安全性、大容量化、小型化などの点で優れています。電池の性能は充放電過程における正極材の結晶相変化と密接な関係があり、透過力の高い短波長X線を用いたオペランド測定が盛んに行われています。短波長X線としてはMo線源のほかにAg線源が利用可能です。Ag線源と集光光学素子を組み合わせると、試料自体による吸収が顕著な全固体電池でも、透過X線回折法によるオペランド測定を行うことができます。

    測定・解析例

    図1に今回測定したラミネートセル型全固体電池の構造、図2にAg線源と集光光学素子を搭載したX線回折装置で測定したX線回折プロファイルを示します。他の構成材と比較して厚さが小さい正極材(NMC(Li(Ni,Mn,Co)O2))からの回折ピークが明瞭に検出されました。図3に充放電レート 0.05 C = 0.05 mA/g で充放電を行いながら観測した (a) 正極材の回折ピークの多重書きと (b)プロファイルマップ、および (c)電圧・電流グラフを示します。充放電に伴って、NMC 003 回折ピーク角度が変化する様子が確認されました。

    全固体電池の構造

    図1 全固体電池の構造

     全固体電池のX線回折プロファイル

    図2 全固体電池のX線回折プロファイル

    全固体電池のオペランド測定結果

     図3 全固体電池のオペランド測定結果(a) NMC 003ピークの多重書き (b) NMC 003ピークのプロファイルマップ (c) 電圧・電流グラフ

    試料ご提供: 大阪府立大学 大学院工学研究科 辰巳砂・林研究室 様

    推奨装置

    • 全自動多目的X線回折装置 SmartLab + Ag管球 + CBO-E集光光学系 ラミネートセルアタッチメント
    • 高分解能・高速1次元X線検出器 D/teX Ultra250 HE
    • ハイブリッド型多次元ピクセル検出器 HyPix-3000 HE

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